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日系企業の2012年の課題(人事労務から)

第20回 2012年03月

 2月18日のSBF例会にて、お話した内容に補足して報告いたします。

 不景気な日本の現状からの脱皮を図ろうと、中国に進出する企業も増えてきましたが、中国はそんな甘いものではありません。
 相当な覚悟と勉強をしていなければ、無駄な投資に終わります。

 理由は、競争が激しいからです。
 大きな市場を求める夢や希望は、誰でも考えます。

 誰でも、というのは、日本の同業者だけではありません。世界中の同業者が競争相手です。今では、中国系企業も手ごわい競争相手であることはご承知のとおりです。
 日本で学び、中国の日系企業で磨き、独立して世界を相手にしている民間企業は極めて強力です。日本流にこだわらず、世界のよいところを活かしているからです。しかも、強烈なトップダウンで決定と行動が早いのも強みです。

 日系企業の弱みは、日本流にこだわり過ぎが問題だと言われます。
 日本流で何が悪い?
 日本流の全てが悪いのではありません。

よいところ、優れているところは多数ある。
 基礎技術や商品開発力、5S運動や源流管理などの品質管理、TPSやJITなどの生産管理、人を大事にする人事管理、健全な労使関係の構築、愛社精神の高揚、ボトムアップすなわち社員の意見を大切にする、など多数あります。

悪いところもある。
 長期雇用・永年勤続を前提とした属人的労務管理(属人的とは、年齢・勤続・学歴・性別・家族構成などその人固有に属する能力や実績と無関係な内容)、集団指導体制でトップダウンが少なく何でも会議、過去の習慣と伝統を尊重し過ぎ、子会社の独立行動を嫌がる、取締役の職責と権限を軽視、などです。

 日本流にこだわり過ぎが問題というのは、日本の優れたものだけを中国に合わせて導入するのであれば問題なく、歓迎もされますが、それはあまり持ち込まず、悪いところばかり持ち込むことに問題があります。

 今後、中国で経営するには、世界のよいところを取り入れなければ存続できないだろうと思います。

例えば、
 属人的人事制度は廃止し、能力や実績優先の人事制度を構築して、優秀な者を逃がさないようにする必要があります。しかし、当初は労働者から嫌われます。特に永年勤続者に反発されます。中身が理解されれば歓迎されますので、緊密な労使の話し合いが必要です。
 その為にも、健全な労使関係構築は、日本のよいところを輸入すべきです。残念ながら、現状の中国の工会活動は形だけであり、労使関係や労使交渉を全く意識していません。突然発生する無組織のストライキをさけるためにも必須です。

 日本の伝統である「人を大切にする」も輸入すべきです。
 その、究極は社員教育です。中国にある日系企業の社員教育は、欧米系企業にすらおくれています。
 教育し、基礎知識と意識を高めなければ、日本から優れた技術やシステムを輸入しても活用できません。
 中国では、組織よりも人に属するため、愛社精神が育たないと言われます。しかし、人も組織のあるべき姿や向かう方向を共有すれば変わります。愛社精神ではありませんが、組織の方向に忠実になるのは間違いありません。これは教えたからといって変わるものではありません。集団研修の中での、繰り返し討議で自覚されるものです。

 高く評価されている日本の開発力は、中国では邪魔になることもあります。それは、あまりにも高度で凄いため、それをそのまま中国で売ろうとしていることにあります。それを欲している富裕層もいますがまだ未成熟な中間層では買えないし、志向性も異なるものがあります。
 中国の風土と志向に合わせたもの、すなわち現地志向の開発をすべきです。それを実行しているのが韓国系企業や欧米系企業です。技術力で負けるはずがないソニーやパナソニックが、サムソンやノキアに中国で負ける原因がこれです。

 最後に、総経理など経営者への進言です。
 ボトムアップすなわち社員の意見はまじめに聞いてください、しかし、最後は「皆の主張は分かった。では、こうするぞ!」と、トップダウンで決めてください。中国で成功するにはスピード感ある経営が欠かせません。

 日系企業は、上記の他にも改善すべきところは多数ありますが、最低限上記をしなければ生き残れないことを覚悟すべきでしょう。

 問題は、親会社がそれを理解し、それらを実行させてくれるかどうかです。
 親会社の説得が、総経理の本年最大の使命になるかもしれませんね。

佐藤中国経営研究所・上海知恵企業管理諮詢有限公司 佐藤 忠幸佐藤中国経営研究所・上海知恵企業管理諮詢有限公司 佐藤 忠幸
経営管理コーナーでは、中国での企業経営はいかにあるべきか、事例を中心としたご紹介をしています。