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労働契約法への対処① 資本主義社会に習った「労働契約法」

第10回 2008年5月

中国労働契約法(以降は新法と略す)が今年から施行され、あわてている企業もあるとかうかがいます。これについて、数回に分けて勉強していきます。

そもそも、この法律は、「労働者は経営者に対して弱いものであり、保護すべきだ」という観点から作られた新法であり、資本主義社会からみれば当然の法律です。
元来、中国は労働者と農民の国家であり、労働者は保護しなければならない対象ではありませんでした。しかも、高度経済成長を支え、大量の出稼ぎ労働者を都会で吸収するためにもある程度労働者に我慢してもらおうと、企業有利な「労働法」が通用されていました。
そこで、中国独特な雇用形式・労務管理方式が完成しています。

通用しなくなった中国独特の労務管理

試用期間中に適性診断をしてだめなら本契約せず、契約期間満了30日前までに継続雇用をするかを決め、不要と判断すれば企業側の一方的な理由で解雇できた。労働契約は原則1年であり、雇用調整は契約更新人員の調整で行なえる。などです。
すなわち、労働契約しても試用期間後か1年後には会社の都合だけで一方的に(退職金もなく)解雇できたのです。
さすがに、WTO加盟5年を経てそのような特殊な労務管理は中国でも通用しなくなり今回の新法制定となりました。
もう一つの観点では、日本的な労務管理すなわち「長期安定雇用」を前提とした労務管理が日本の高度成長を支えたという事実を直視した新法でもあります。

新法の内容は各所で公表されているので省略しますが、簡単に、問題点と課題にしぼって勉強します。

「上に政策があれば、下に対策あり」は通用させないぞ!

内容的には、新法といいながら、既存法(労働法、工会法、各自治体の条例など)と90%以上は同じで、重なっています。目新しい内容は、固定期限のない労働契約の範囲を広げたことと、経済補償金のこれまた支給範囲を広げたことぐらいです。

何故今更その様なことをするのでしょうか?

労働法でも、新法で表された大部分が規定されていますが、守っていない企業の方が多いぐらいで空文化しています。

「上に政策あれば、下に対策あり」という中国系企業の考えにしてやられたといえるでしょう。新法施行前の意見聴取期間でも中国系企業団体はほとんど意見もなく反対もありませんでした。

発布され、いざ運用細則を網羅した条例を出そうとしたら猛烈な圧力をかけて、次々につぶしにかかっています。5月8日に同条例の第3草案が出され意見聴取に入っていますが、第2案打3案に比べたら、意見が分かれた箇所は条文そのものがなくなり、半分の45条しかありません。この意味は、骨抜きにしたのではなく、法の制定精神を貫くぞという意味だと理解します。運用条例がないということは、本規定がそのまま適用されます。解釈に異論があろうと主旨貫徹するぞということでしょう。一度緩和する方向で妥協したら元には戻せなくなるから、運用条文が半減したのでしょう。

今度こそ、変な対策はさせないぞ、守らなければ厳しく罰するぞということだと思います。心してかかってください。

健全な労使関係の構築

既存の法律でも、工会(工会とは労働組合の存在)あるいは社員代表者組織との協議を義務付けています。しかし、特に中国系企業の工会組織率は低く20%以下でした。当然社員代表者組織もありません。日系企業もそれに習って極めて低い組織率です。

新法では、就業規則制定や改定、労働条件の改定時には工会または社員代表者組織との協議をより一層明確に義務付けています。賃金以外の労働条件を網羅した労働協約を集団で協議締結も明確に要求しています。

労働者一人ひとりとの交渉では弱いので、企業内に労働者団体を組織させ、それを利用して集団で協議させようというものです。

人員整理する場合は当然協議対象であり、解雇でも意見を聞くことも含めて、日本と全く同じですね。

各自治体や地方総工会は、工会設立を必死に促進しており、広州市では90%以上の組織率になったと喧伝されています。

日本では、労働組合を敬遠する経営者が多い。ましてや社会主義の中国で工会を作るなんて、とんでもないと憤慨する経営者もいます。しかし、中国の工会とは何たるかを勉強し、日本の健全な労使関係を、中国でも築けば恐れることはありません。

また、健全な工会がある企業においては、ストライキは無いといえます。

次号において、中国の工会とは何かを学習します。

佐藤中国経営研究所・上海知恵企業管理諮詢有限公司 佐藤 忠幸佐藤中国経営研究所・上海知恵企業管理諮詢有限公司 佐藤 忠幸
経営管理コーナーでは、中国での企業経営はいかにあるべきか、事例を中心としたご紹介をしています。