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中国に赴任される技術者や管理者へ要求される条件②

第4回 2007年01月

前号に続いて、管理職や技術指導として中国に赴任される日本人の方について、もう少し事例を元におさらいをしたいと思います。

事例2 意思が通じない赴任者

昆山工業団地にある日系特殊自動機器製造B社には、製造指導の日本人赴任者が3人いる。何れもベテランの製造マンである。

製造スタート時は、赴任者が中心に機器を製造したのでスムーズに立ち上がった。しかし、中国人管理者を採用し、業務移管をし始めたとたんに問題が起き始めた。

総経理が心配して事情聴取すると、次の様に口々に不満を訴えた。

日本人赴任者は、全て中国人のせいにして怒っている。
 「中国人は、幾ら説明しても理解できない、能無しだ」
 「中国人は、言うことを聞かない」
 「あの通訳は役に立たない」

中国人管理者も、次のように怒っている。
 「日本人は、言うことがその都度変わるので何をやってよいのか分からない」

通訳まで、次のごとく訴えた。
 「日本人は、知らない言葉ばかり言っているので通訳できない」
 「言っていることが分からない、聞返すと怒るので適当に通訳するしかない」

中国語よりも、正しい日本語を

日系企業の多くは、赴任者を派遣する前に中国語教室に数ヶ月通わせます。

しかし、失礼ですが、赴任される方にまず勉強していただきたいことは中国語よりも日本語です。事例は他人事ではありません。

事例で観察された問題点は下記でした。

  1. 専門用語、業界用語、職場用語が飛び変わっている
  2. 前置きが長すぎたり、例示が多すぎたりして話の論点が不明
  3. 極端な省略があって、何のために何をするのか伝わらない等など

業界用語・職場用語は中国では通じない

特に問題は①です。ここが異国の中国だということを完全に忘れています。何時の間にか社内用語にカタガナが増えたことに気がつきませんか?カタガナ用語の多くは外来語であり和製英語です。業界用語や職場用語もその類が主です。それを通訳できる中国人は殆どいません。そのカタガナ用語は、漢字混じりの日本語に直して通訳に説明してください。ご自分で日本語が分からなければ通訳不能と思ってください。どうしても分からなければ辞書や参考書で調べてください。その過程で今まで曖昧だった本当の意味を理解できるはずです。

しかし、日本からくる文書や標準類にはそれがたくさんあって、いちいち直す暇がないということもあります。このような場合は専用の業界用語辞書を作ってください。

通訳に、カタカナ用語を平易な言葉で意味を一生懸命説明し、それにあう適当な中国語を探してもらいます。

一時私がお世話になっていたアパレル会社でも、膨大なアパレル用語比較表を作っていました。それは、膨大なもので、監督者や通訳だけでなく新人の必修科目になっているぐらいです。

それでも、次から次に新語が出て来ますのでトラブルは絶えませんが、この表を毎月のように更新してトラブルを最小限に抑えていました。地道な努力ですが、もしこの比較表が無かったら大変なことになっていることでしょう。

「愛します」だけで通じるのは恋人だけ

問題点の②と③は、日本人のもっとも苦手なことです。中国語を含めて外国語の大部分は「主語+述語+目的語」が明確です。日本語では「主語+目的語+述語」ですね。

I Love You = 我 愛 你 = 私は愛します貴方を = 私は貴方を愛します

中国語も例外でなくこの文法(主語+述語+目的語)は必ず守ります。それでないと誤解を招いたり立場が逆になったりして喧嘩になりかねません。

日本人の多くは述語以外を省略しますが、長い間同じ職場で働いていた仲間なら通じても新職場しかも異国では通じません。「愛します」だけで通じるのは恋人だけです。

5W1Hを忘れるな

もう一つの重要なことは、5W1Hを忘れるなということです。「何を、何時、誰が、何処で、どうやって、何のために」するのかを明確に伝えなければ中国人は動けません。あるいは推測で行動されます。結果が期待と異なることがあっても当然です。

どの段階の発言なのか明確に

さらに、指示・命令依頼・お願い忠告・指導、の3段階のうち何処に当る発言なのかを明確にしなければ中国人は動きません。指示・命令なら納期や優先順位が、特に緊急事項には重要です。逆に、定常業務の合間に考えてくれという程度の依頼事項や、忠告程度の仕事を、定常業務を放り出してやられても困りますね。

日本人の多くは「言語明瞭、意味不明」だとよく言われます。通訳が直訳したら全く意味不明になるような余分な言葉が多すぎ、必要な言葉が抜けているからです。中国人が理解できない、間違えるのは、伝える努力と技術が足りないことの表れです。

知らないのと能力がないのとは異なる

また、中国人が知らないのと能力がないのとは異なります。知らなければ教えればよいことです。ご自分の今があるのは、新人時代にどれだけ先輩や上司に教わったおかげかを思い出してみてください。


今号でおさらいしたことは、全てコミュニケーションの問題です。

冒頭に、中国語よりもまず正しい日本語をと書きましたが、言い換えればコミュニケーション能力を高めていただきたいということです。異なる言語と文化、そして育った歴史環境の異なる中国では、日本以上にそれが求められます。

コミュニケーションとは、言葉を通じて、自分が考えていることを相手に伝え、共通の価値を創造し、人間関係をつくり、問題を解決することです。

話の受け手がアクションを起こして初めてコミュニケーションが取れたことになります。
すなわち、「話の効果の決定権は聞き手にある」です。

~相手が行動しないのは、伝わっていないということである~

以上の記事は、大陸共同メディア㈱発行 月刊『大上海圏日企情報PRESS』に連載
2006年11月号から転載・再編集

佐藤中国経営研究所・上海知恵企業管理諮詢有限公司 佐藤 忠幸佐藤中国経営研究所・上海知恵企業管理諮詢有限公司 佐藤 忠幸
経営管理コーナーでは、中国での企業経営はいかにあるべきか、事例を中心としたご紹介をしています。