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中国企業経営・管理のあり方シリーズ 中国での総経理の役割②

第2回 2006年11月

中国企業経営の要である総経理の役割と資格要件について、前回学びましたが、もう少し事例を挙げて、勉強したいと思います。

事例5 放任のつけ

蘇州郊外のS社は10年ほど前に日本側90%出資と地元村政府10%出資の合弁会社を設立した。当時は工業団地がなく、村の協力なくして農地の転換及び農民転居ができなかったからである。董事(非常勤)と副総経理各1名を村から出すことも決まった。副総経理は村長の一族。日本側から出せる総経理は、人事・労務及び財務面に弱いので村派遣の副総経理が管理面を見ることが決まった。

総経理は、管理の全てを副総経理に任せてしまった。結果は、何時の間にか利権に絡む部門の責任者の全てが副総経理一族・一派に占められた。

副総経理の親族は、S社と同業の会社を作り、S社の設備・備品を休日に持出し、S社作業者も親族会社で休日に労働させていた。社員食堂担当者は、材料費のバックマージンを受けるだけでなく、材料を水増し発注し余剰材を転売して儲けていた。それらを、取り締まるべき警備員も一族でありわざと見逃していた。

管理面に弱い日本人総経理よりも、人事と財務を握る副総経理が実質的な老板となってしまい、良識派幹部は全て退職した。副総経理の存在を脅かしそうな者は一切採用しないし、親会社が直接採用して送り込んだ幹部も徹底的ないじめで辞めさせてしまう。

副総経理を辞めさせるため、村の株を買い戻したくても、高い金額を吹っ掛けられておいそれとできず、その間に会社は腐りに腐った。

事例6 現地採用総経理の不正

広州市の電子部品製造のR社は、香港と日本との合弁会社。創業当初は日本の大手電機メーカー出身者S氏を総経理に迎えた。S氏は、ゴルフ以外は幹部任せ、一向に業績があがらず香港側が怒り解雇。代わりに香港側が採用した中国人C氏を総経理とした。

C氏は、切れ者であり仕事熱心でもあり、かつ製品も時流にのり、急激に儲かり始めた。

この間に、日本側親会社が変わった。新親会社は、新たに財務・人事面を担当するT副総経理(中国人)を採用し送り込んだ。莫大な利益は出ているが、C総経理がベンツや高級マンションを現金で購入した様子を散見し不正の臭いを感じたからである。

T副総経理は、過去3年間に500万元(約7500万円)の使途不明金を発見し、C総経理を告発し逮捕してもらったが、公安ややくざと繋がったC氏は巧みに逃れて1週間で釈放されてしまった。逆にT氏は、身の危険を感じホテルを転々とする羽目となり、C氏を追放するのに半年もかかってしまい、結局500万元は戻らなかった。

当然、優秀な幹部はT氏在任中に全員辞め、さらにT氏と一緒にその一派も追放したため幹部不在の会社となり、顧客に見放された。

総経理は尊敬されなければならない

中国人幹部から尊敬される総経理像は次の3つである。

  1. 尊敬される人格・人望
  2. 尊敬される業務能力と決断力
  3. 尊敬される行動力

総経理にこのうち2つが欠けたら優秀な中国人幹部は退職する。もし、退職しない幹部がいたら、能無し又は私利を得ていると考えた方がよいだろう。

親会社の顔色ばかり窺っている総経理が尊敬されるわけが無いし、結論の先送りばかりしている総経理は馬鹿にされる。「中国人は、組織につくのではなく人につく」

「事例6」のS総経理とT総経理は両極端な事例である。

S氏は大手メーカーの大組織の中では成果が出たのであろうが、新会社それも中国では過去の実績は無関係。自ら組織をつくり育てなければならないがそれを怠り、組織の頂点に胡坐をかいて失敗した。T氏はその裏返しで当初はよかったのであるが、監視の目がないと会社だけ儲けさせることはせず個人的にも儲けようとした。董事長および董事会の働きが形骸化した結果であろう。

中国では、会社に属するよりも「老板(ラオパン)」に属する

何故、会社よりも総経理を見て就職するかどうか決めるのか?

中国では、国や政府、会社という組織に対する信頼は希薄。信頼できるのは一族郎党あるいは親分子分という身の回りの存在だけ。

会社組織も同じことで、会社に対する帰属意識が薄いため、ピラミッド的組織を作ることが困難であることを認識すべき。むしろ親分子分の関係で組織が成り立ち、その親分[老板(ラオパン)という]への信頼関係で全てが決まる。

信頼関係の評価基準は、親分への忠誠度、それに対する見返り利益。企業であれば、評価と昇給・賞与、それと、昇進・昇給につながる仕事につかせてもらうこと。

エコヒイキをして、特定の者ばかりに利益を与えていれば、その老板組織は局部的なものにしかならない。大組織なら、機会均等・公平公正でなければ老板として尊敬されず、組織は当然分裂崩壊する。人事制度の重要性がここにある。

さらに、総経理が老板でなく、異なる者が老板の会社は悲劇を生む。まさに「事例5」がそうである。

総経理は行ける者から選ぶな!適性で選べ!

日系企業の総経理選抜基準の多くは、中国へ行けるということが第一となっている。すなわち、中国に行けないあるいはどうしても行きたくない個人事情の者、日本本社として、残しておきたい者を対象から外す、ということから始まる。(今は変わったかもしれない、そうだとしたら杞憂であり、申し訳ない)

中国での総経理の役割と重要性は、ご理解いただけたと思うが、その適性にあった人材を本社を犠牲にしても選抜していただきたい。新天地の中国とは事情が異なり、本社には既に歴史があり、色々な部署には後継者あるいはその候補者が居られるはずである。万難を排して最高の人事をしていただきたい。

中小企業のオーナーさんと話していると「そんな者は当社にはいないよ」といわれるが、それであれば、①オーナーが自ら行く②外部から経験者を採用する③進出をあきらめる、以上の3択であろう。

総経理は苦手をつくるな克服せよ!任せよ、しかし放任するな!

総経理はすべてに目が届かなければならない、財務面では、どこに金がある、どこに財産がある、どこに不正があるか見抜ける眼力を養っていただきたい。それでなければ、会社は悪の棲家になり、悪に食い放題にされる。

人事面では、放っておけば何時の間にか、不正を許す者ばかりを、それどころか不正仲間を幹部の中枢に据えられてしまう。「事例5」は大なり小なり日系企業の多くの姿。

「ヒト・モノ・カネ」の内2つまでを放任するのは経営放棄。

現実は、万能選手はいない。しかし、苦手な分野でも関心をもち努力をすれば必ず克服できるもの、少なくとも不正を見抜くことはできる。

日本にいたのではできないチャンスと捉え、努力・勉強していただきたい。

日系企業の総経理は替わり過ぎ

最後にお願い。

日系企業の総経理の多くは、3~5年で交替している。欧米系企業に比べて幹部定着率が低い要因がここにもある。

中国赴任は子会社といえども、異国。中国というものに慣れ、理解できるまでに、しかも、人身掌握にも年数が必要。そこで、自分としての方針を固め周知徹底し、成果を出し、組織をつくり、幹部を育てるには最低5年は赴任しないと無理。

できれば、会社創設時の初代総経理は、10年がんばっていただきたい。

以上の記事は、大陸共同メディア㈱発行 月刊『大上海圏日企情報PRESS』に連載中。
2006年10月号から転載・再編集

佐藤中国経営研究所・上海知恵企業管理諮詢有限公司 佐藤 忠幸佐藤中国経営研究所・上海知恵企業管理諮詢有限公司 佐藤 忠幸
経営管理コーナーでは、中国での企業経営はいかにあるべきか、事例を中心としたご紹介をしています。