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中国企業経営・管理のあり方シリーズ 中国での総経理の役割①

第1回 2006年10月

日本で、「企業の社長さんの役割と資格要件は何ですか?」と尋ねて答えられない方は殆どいませんね。ところが、中国企業の「総経理さんの役割と資格要件は何ですか?」と尋ねると答えはバラバラです。しかし、多くの方は「日本の社長と同じです」とお答えになります。ところが、実際に派遣された方を拝見すると失礼ながら、その定義を無視した人事を多く見かけるのは、どういうことでしょうか?

中国企業経営の要である総経理について、事例で勉強をしたいと思います。

事例1 親会社ばかり見ている総経理

上海郊外の機械系日系A社で、重大クレームに繋がりかねない品質問題が発見された。中国人製造部長が日本人総経理にトラブル報告をし「この後、問題解決できるまで製造は止めた方がよいと思うが如何?」と相談した。総経理は「製造ラインを止めるということは重大な問題であるので日本の社長に相談するので待て、急ぎ原因究明をせよ」と幹部に指示をした。

この後、この総経理の権威は一挙に失墜し、中国人幹部からは面従腹背の関係となってしまった。表面的には言うことを聞いていても、腹の中で転職のことを考えているのであろう。

事例2 子離れを許さない親会社

蘇州工業団地にある日系成型B社の総経理はしっかりとしており、毎年の事業計画と投資計画・採用計画すべてを董事会に出して承認を得ている。当然、B社の事業計画範囲内のことは総経理の判断で進められるはずである。

それでも、親会社の顔をたてようと総経理は時々お伺いをたてていた。しかし、親会社からの返事は必ず何かしらの難癖をつけてきた。「どうしてその設備が必要なの?」「どうしてその人が必要なの?」「もっと安いものはないの?」「何々は相談もなく買ったがどうして?」等々。

親会社の担当取締役は、そう言わないと自分(親会社)の権威が落ちるとでも思っているのか、また、董事会で議論し承認を得られた事業計画を無視しているのか、その計画を作成するまでの苦労も何も考えていなく、立場上追及しているのみである。

この総経理の将来は、次の3コースである。

  1. プッツンしておかしくなり解雇される
  2. 親会社を無視した行動に出て解雇される
  3. 無気力になり、親会社の方ばかり見て、任期だけ全うすることに専念する。

何れも、B社がおかしくなるのは明白である。

事例3 総経理より偉い親会社の事業部長

上海郊外の電子機器日系C社は、親会社の2事業部からAV機器メーカー向け製品と、事務機メーカー向け製品と、2種類の製品群を移管してきている。

C社の総経理X氏は本社海外事業部からの出向、AV機器用製造部長Y氏は親会社AV機器事業部からの出向、事務機用製造部長Z氏は親会社事務機事業部からの出向である。Y氏Z氏両者ともに、総経理のX氏には相談せず親会社の事業部長に何でも直に相談している。また、C社内部での幹部会で意に添わない決議がされるとY氏Z氏両者ともに事業部長に直訴し決議をひっくり返していた。当然C社は3頭政治になり、経費や人事その他全てが分捕りあいとなり、優秀な中国人幹部は次々に見切りをつけて退職した。

事例4 合弁会社で経営分離の失敗

これも上海での日系企業の事例

ここは、A商社とB製造会社の対等出資の合弁会社である。A商社側は、董事長を出し営業と企業経営を行う。B製造会社側は、総経理を出し工場経営を行うことで責任を分担する契約をした。

当初数年間は時流にのり非常に儲かった。しかし、最近数年間は赤字であり、いよいよ改善を双方の親会社から迫られて内部議論が始まった。

A社側の董事長は、B社の工場経営が駄目だから品質も落ちて客が逃げたせいだ、という。

B社側の総経理は、営業が力不足で受注内容が悪くなる一方だ、即ち価格は落ちるし、多品種小ロット化が進む一方だ。それでいながら人事も力不足でよい人材を採ってくれない。財務も原価計算すらろくにできない。即ちA商社が悪い。

これに対して、董事長は、人材採用も、原価計算も工場経営の一環ではないか、多品種小ロット化も時流ではないか、それに対応できない工場が悪い。即ちB社が悪い。

と、議論は堂々巡り、A社とB社どちらが悪いのでしょうか?

結論は、両方とも悪いのですが、どちらかといえばA商社に頼ったB社が悪いでしょう。A社すなわち、董事長に大事な営業や人事・財務を頼りっきり任せりっきりにし、総経理はもの作りに専念などとはまかり通りません。

総経理とは、経営計画及び経営目標を達成するための執行責任者。

総経理とは、中国の会社法では次のように定められている。

「董事会(株主総会兼取締役会)にて決められた経営計画及び経営目標を達成するための執行責任者として、総経理一名を董事会にて任命する」即ち会社を実際に経営する人、つまり社長である。しかも、董事会で決議しなければならない事項は限られており、多大な責任と権限が総経理に集中している。逆にそれがないと企業運営はできない。現場では即断即決。

日系企業といえども中国にあれば「中国企業」

日本にある子会社とは根本的に異なるのは、異国文化の中国での企業経営。日系企業といえども、中国にあれば「中国企業」であり、「日本企業」ではない。

今まで見てきた事例は、総経理の資質あるいは意識にも問題あるが、親会社での総経理に対する位置付け、もっというと中国に於ける子会社の位置付けにも問題がある。

親会社の中で、子会社の位置付け、そしてその責任者である総経理の位置付けを見直し、それにふさわしい人選と教育をお願いしたい。

幹部人材不足の日系企業

中国企業である以上は、中国人幹部で経営する。

ここ数年間で各種学校での日本語学科卒業生は急速に増えている。しかし、相変わらず、日系企業高級幹部の不足は解消されていない。中国人が、日系企業に何故就職してくれるのか?就職理由の第一は、企業の発展とともに自分も成長し、所得が増えること。

つまり、自分を育ててくれるであろう、そして正当に評価してくれるであろうという期待を(会社というよりも)総経理に抱いて入社を決めるが、結果は期待外れ。その結果、今年の中国全国大学生45,000人就職希望先企業のベスト50社には日系企業が1社しか入っていない。(調査:中華英材網、光華管理学院、経済観察報、協力:騰訊求職)ところが、ブランドでの中国人気企業ベスト30社には日系企業が13社も入っている。(調査:日経BP)

商品には人気があり、高い評価を得ている日系企業でも、就職先には選んでもらえない事実を厳しく認識すべきである。

何故、日系企業の人気が低いのか

別表を見ていただきたい。どうみても中国人の体質に合っているのは欧米系である。

あるデーターでは、日系企業の退職者の大半が入社後3年以内である。

優秀な者を、大金をはたいて集め、大金をかけて教育訓練をして貢献される前に辞められており、その優秀な若者達は日系企業で学んだことを活かして、欧米系企業で給料もポジションもステップアップし活躍するという残念な結果を生んでいる。

「中国人は直ぐに転職する、愛社精神がない」と嘆く前に自社の企業体質を中国でも通じるものにすべく努力をするのは総経理の責務である。

※別表

  欧米系企業 日系企業
現地法人の位置付け 親会社から独立した行動を是認し、基本方針と事業計画を定めたら現地に任せる。 親会社が、子会社の独立した行動を嫌がり、細部まで報告を義務付け、指示を仰がせる。
経営者派遣方法 経営者として最適な人選を公募も含めて行い、徹底的に任せる。成功すれば高額ボーナス、失敗すれば解雇の契約方式。 社員の中から人選。経営未経験者が多い。親会社の遠隔操作が効く者が重宝がられる。
現地管理者活用 現地法人では、徹底的に現地人管理者を活用する。抜擢人事は当然。 日本人管理者が重要ポストを握り、現地人に任せない。現地人を採用しても直ぐには権限を委譲しない。
賃金制度 仕事別賃金が主体。年功は一切考慮せず、入社時から仕事と賃金が明確になっている。中国の求職者意識と合致している。 賃金制度・人事制度がない。制度があっても不明確或いは日本的な制度移転が多い。仕事と賃金を入社後1~2年見てから決めようとしており、不満多し。
教育制度 目標管理制度、業績管理制度が普及しており、その為の基礎教育システムあり。 人事制度自体が不明確なため教育制度が不明確。OJT教育という名目での放置が多い。

以上の記事は、大陸共同メディア㈱発行 月刊『大上海圏日企情報PRESS』に連載中。
2006年10月号から転載・再編集

佐藤中国経営研究所・上海知恵企業管理諮詢有限公司 佐藤 忠幸佐藤中国経営研究所・上海知恵企業管理諮詢有限公司 佐藤 忠幸
経営管理コーナーでは、中国での企業経営はいかにあるべきか、事例を中心としたご紹介をしています。