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中国における会計制度の動向 ② 会計師制度

第5回 2007年3月

中国における会計法律・法規の確立

「会計法」に基づいて、中国で企業を設立する場合、企業は会計師を雇用しなければならない。会計師の主な役割は「記帳」と「納税」である。

会計師資格を取得するためには、政府財政部門の統一試験に合格しなければならない。資格を取得した後も、毎年一回の研修を受け(一部地域では2年に一回)、資格更新を行わなければならない。

日本では、以前「経理士」という資格が存在したが、中国の会計師制度はそれと似ている。ただし、中国の会計師は記帳だけではなく、納税申告もしている。企業内部で記帳と納税の役割を一本化にしているので、日本のように、企業内部で記帳を行い、税理士に納税申告を依頼するシステムはほとんど存在していないのが現状である。

会計師の資格はレベルによって以下の4段階がある。

  1. 「会計従業資格」:一般的に「上崗証」と呼ばれる。
  2. 「助理会計師」:一般的に「初級資格」と呼ばれる
  3. 「会計師」:一般的に「中級資格」と呼ばれる
  4. 「高級会計師」

「高級会計師」は政府の認定により与えられる資格であり、上場企業、大型国有企業等の財務会計責任者を務めるのに必要な資格である。それ以外の資格は全て試験によって取得できる資格である。

「小規模納税人」企業は最低1名の「会計従業資格」を所持している会計師を雇用しなければならない。「一般納税人」企業は最低1名の「会計従業資格」を所持している会計師に加え、もう一名「助理会計師」を所持している会計師を雇用しなければならない。地域、業種、企業規模によって、そのハードルがもっと高い場合もある。

法律によって、会計師の「職」は保証されているシステムになっているため、一部の会計師は、自分の上司は「総経理(社長)」ではなく、「管轄政府部門(税務局)」だという認識を持っている。毎月、税務局に会計の財務諸表、報告を提出する前に、総経理に見せない会計師もいると言われている。

確かに、会計師は政府に対して、自社の会計を合法的に処理し、財務・会計情報を正しく報告する義務がある。その権利も法律によって保護されている。だからと言って、会計処理の主体となっている自分の会社を無視するのは本末転倒である。「会計」が企業経営管理の一部であるという意思表示をするために、経営管理制度としての「企業内会計制度」を確立することは重要である。

前文では、中国の会計改革の概要を紹介した。1993年会計制度と税務制度の分離を開始してから、2004年「小企業会計準則」を実施するまでには、11年間しかかかっていない。そのスピードは中国政府が市場経済に適合する会計法律・法規の確立を急いでいることの現れであるが、会計師の認識が簡単に、また迅速に変化していくことは困難である。

筆者は一度、中国の「会計従業資格」を取得するための研修を参加したことがある。日本の簿記2級レベル相当の資格であるが、試験は以下4つの科目に分けられている。

  1. 「会計基礎」:会計の原理
  2. 「会計実務」:仕訳、記帳の方法、財務諸表等の作成方法
  3. 「財政法規」:関連法律・法規
  4. 「会計電算化」:会計ソフトの使用方法

「会計電算化」以外の授業内容は、半分以上法律・法規の内容紹介であった。簿記に関する勉強と練習は少なかった。それに、説明している法律・法規のほとんどは「会計法」、「会計準則」ではなく、「税法」と「税務規定」であった。

例えば、固定資産(機械類)の減価償却の授業では、「会計準則」の規定である「固定資産の性質ならびに使用状況に基づいて、固定資産の耐用年数と残存価値を、合理的に確定する」ことを説明せずに、「税法」を基づいて、「機械類の残存価値は原価の10%、償却年数は10年とする」と教えられた。

このように教育されている会計師たちは、当然「会計」と「税務」の区別を理解できず、就職すると、当然のように税務基準に基づいて会計処理をしてしまう。

「会計」と「税務」が混同している会計師教育が多く存在しているのには理由がある。会計師教育の教材を作成する教師並びに教育を実施する教師たちは、一定の会計経験のある人たちである。1993年「会計」と「税務」の分離を開始してから、2006年まで13年間しか経ていなかったことを考えると、その先生たち自身が「会計」と「税務」の区別を明確にすることができないではないかと思われる。先生がわからない内容、別の方法で勉強しないかぎり、生徒である若い会計師たちに分かるわけがない。

同様の理由で、若い会計師たちが就職している企業の会計師先輩たちのなかにも、「会計」と「税務」の区別をしない人が多い。この会計師社会の現状を考えれば、若い会計師たちがすぐに「会計」と「税務」の区別を理解することは難しい。

たくさんの外国企業の進出によって、「会計」と「税務」を区別すべきという考え方は浸透しつつである。中国政府も「会計」と「税務」を分離させる努力をしているが、その考え方が普遍的になるのにはまだまだ時間がかかると予想される。

会計師の認識の変化と、会計法律・法規の進化に時間差があるという現状はすぐに変えられないのであるから、企業は、自社の会計制度を構築することによって、会計師に指針を与え、経営管理に適合する会計データを作成する必要がある。

上海誠鋭実業有限公司 叶 家胤上海誠鋭実業有限公司 叶 家胤
中国会計コーナーでは、日本とは異なる中国の会計情報について、皆様へご紹介をいたします。